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国立女性教育会館「機能強化」政策における、研修棟・宿泊棟の撤去・廃止の問題ーー建築学的知見から
瀧章次(ヌエネット)
はじめに
1.国の政策の間に矛盾がある
2.SDGsに逆行している
3.技術革新を無視している
はじめに
国立女性教育会館には、研修棟、宿泊棟、茶室、そのほかの様々な建物がありますが、現在言われている「機能強化」政策は、本部棟だけを残して撤去してしまうというものです。これが現在の建築学の観点から考えるとどうか、ということについてご報告します。
1.国の政策の間に矛盾がある
国土交通省は、社会インフラは「長寿命化」を図るという方針を、基準など具体的なことも含めて言っています。2022年、令和4年の第2次補正予算では、文部科学省は建物の寿命をできるだけ長くする工事をするため、2億円の予算を取っているわけですね。実際に修理が2024年の3月に終わっています。ところがその最中に、内閣府の男女共同参画会議で「機能強化」の方針がでて、2023年の11月に嵐山町に対して移転が伝えられている。国の政策で、一方で長寿命化と言いながら、もう一方で建物を取り壊すことを前提に移転すると言っている、これはおかしいのではないかと思います。
2.SDGsに逆行している
日本は国際連合の気候変動枠組み条約に入っております。持続可能な開発目標、すなわちSDGsの達成に日本は関与しなければならないわけです。建築の分野で、これをすすめるための国際的なガイドラインがさまざま発表されている中で、第一は、寿命をできるだけ延ばすこと、しかもそのプロセスにおいて、CO2を出さない、廃棄物を出さないということを重視しています。さらに、生態系、すなわちエコシステムの再生まで取り入れることも考慮に入れた再生建築という方法も考案されています。持続可能性について根本から考える時代になっているといえます。国立女性教育会館の建物を撤去・廃止する、この政策は、建築学的に言うと、安易で時代遅れではないでしょうか。
3.技術革新を無視している
施設を取り壊す主張の根拠として、日本は地震大国だから、老朽化した建物は耐えられないということがありますけれども、日本には「リファイニング建築」という確立された方法があります。民間の大手不動産会社が、不動産再生手法として活用しています。このような技術革新を無視して、老朽化しているから廃止・撤去するといっているわけで、これは国会の場で明らかにしていくべき問題ではないかと思うしだいです。