2/5院内集会「みんなの国立女性教育会館を壊さないで! 」 から、ヌエネットによる問題提起の概要をご紹介します。
第5時男女共同参画政策基本計画(2020年12月25日)における男女共同参画センターと国立女性教育会館(NWEC)との「機能強化」政策の抱える諸問題
瀧章次(ヌエネット)
瀧章次(ヌエネット)
1.「ジェンダー平等」上から実現する?
2.「宿泊棟・研修棟」壊す、これ「機能強化」?
3.全国津々浦々、男女共同参画「戦争」参加?
4.「国の意向」で分断、これ男女共同参画社会?
5.「脱税議員」による政策決定?
6.「長寿命化」とは壊すこと?
7.多様な市民を包摂しないで「男女共同参画」?
8.災害時救援センター なくなっていいの?
1.「ジェンダー平等」上から実現する?
男女共同参画政策が目指すジェンダー平等は、政府主導で「上から」実現するということでうまくいくでしょうか。こういう問題を社会教育の観点から考えてみたいと思います。実際、なかなかうまくいっていないと、男女共同参画白書などでも報告があるわけですけれども、「機能強化」政策では、全国300を超える男女共同参画センターの上に、国立女性教育会館を「センターオブセンターズ」として置き、これらのセンターを管理統制するという形です。この方法で。、国民の中に、人間の権利であるジェンダー平等の意識が生まれてくるでしょうか。
人間の権利の大元の原理である個人の尊厳は、国家に先立つものとして考えられる普遍的原理です。国がこれを管理や統制を行うことで、国民の間に生まれるでしょうか。
私の意見ですけれども、個人の尊厳とは、生活のありとあらゆる場面で、身体性を持って、お互いが尊重し合うということを日常の生活で、気づき学ぶ中で生まれてくるのではないでしょうか。これが一番大きな問題と考えています。
2.「宿泊棟・研修棟」壊す、これ「機能強化」?
この政策の「機能強化」といいつつ、「施設見直し」、さらには「宿泊棟・研修棟の撤去」というのは唐突ではないでしょうか。2023年の11月ぐらいから、地元の埼玉県嵐山町には撤去について、国の意向として伝えられたそうです。さらに遡って、2020年の第5次男女共同参画計画は菅義偉首相のときに作られたものですが、その後、岸田文雄首相に代わった直後の2021年11月29日に、それ以前からの男女共同参画会議で進められてきた「機能強化」政策に、突然、「施設の見直し」そして「取り壊し」が出てくるのは、おかしくないでしょうか。
3.全国津々浦々、男女共同参画「戦争」参加?
岸田政権は、安全保障政策を大きく転換しました。力には力で対抗するということを言っています。このような上からの統制管理で、国立女性教育会館と男女共同参画センターを、国の施策で管理していくと言い出しています。その一方で、国連では女性・平和・安全保障(WPS)という、平和構築や災害復興プロセスに女性が参画し主導的役割を果たすことを目指す政策が進んでおり、日本もそこに参加しています。
力には力で対抗するということで侵害してくる相手、すなわち敵を無力化するために、予防的に防衛力を増強する、こういうことはどこまでいっても限界がない。強大化する論理から極大化への論理として逃げられなくなるんではないでしょうか。このような、力には力の行使を前提とする政策では、それを行使する人間においても、対象とされる人間においても、個人の尊厳が奪われる可能性を孕んでいるのではないでしょうか。そういう意味で、上からの統制は、戦時体制を思わせるような危険性を含んでいると問題提起したいと思います。
4.「国の意向」で分断、これ男女共同参画社会?
今回の男女共同参画の「機能強化」といいつつセンターの施設を撤去する政策も、その予算を策定していく年次サイクルや、5年という中期計画のサイクルの中で、最終的には閣議決定で承認されています。国会を軽視して、国会の外で決定をしているということです。一見、合理的に見えたとしても、国民全体の利益を国会で審議しているのではなくて、一部の利益に偏ることになるんじゃないでしょうか。
それによって、地元、市民、利用者、女性、研究者など、関わる人々の間に分断が生まれています。「国の意向」を振りかざし、強い立場を利用して政策を進めることにより分断が生まれる。男女共同参画社会を目指しているはずですが、その大元である個人の尊厳、対等・平等という原理に反しているんじゃないでしょうか。
5.「脱税議員」による政策決定?
この政策が作られた過程にも問題があるのではないでしょうか。決定権は、内閣府男女共同参画会議が持っているわけですが、その専門委員の任命権者は首相です。会議の構成員である内閣官房長官、議長、そして様々な政務官に、いわゆる「裏金疑惑」や旧統一教会との癒着問題を指摘される議員が複数います。
6.「長寿命化」とは壊すこと?
SDGsの推進という観点から、国は公共インフラの長寿命化を掲げています。国立女性教育会館の長寿命化については、2022年の第2次補正予算ですすめられています。施設の修理が終わったのは2024年の3月です。それにも関わらず、同年7月に「老朽化」を理由に撤去するというのは、明らかに矛盾ではないでしょうか。
7.多様な市民を包摂しないで「男女共同参画」?
政府は、男女共同参画社会の実現とは、多様な人々を包摂する社会を形成することだと言っています。その対象には、多様な背景の国内外の市民が含まれます。国立女性教育会館は非常に優れたバリアフリーの施設です。この施設を利用した宿泊のプログラムの事例がありますが、この意義をオンライン講座で果たすことができるとは、とても思えません。
8.災害時救援センター なくなっていいの?
今年1月の施政方針演説で石破茂首相は、「防災・減災、国土強靱化を着実に推進する」、そして「事前防災を一層具体化してまいります」と言っています。首都直下型地震は遠からずやってきます。また、WHOのウォッチから考えると、パンデミックは一度では終わりません。国立女性教育会館は、新型コロナウイルス感染症のときに救援センターとして活用されました。それを壊しておいて、防災体制が作れるかということは、大いに疑問です。